Prisoner of Love ~全ての恋愛が失恋だとしても~
逃げ帰るようにソファに戻った真実は、
転がっていたライラックのクッションを抱き締めて、
其処に顔を半ば埋める。

アレは田中の毒気に当てられて、つい口にしてしまった事だと。

昨晩バスルームで久しぶりに自分でしてしまった翌日だからだと。

名前しか知らないオトコに妙に共感してしまった夜だからだと。

―――そう自分に言い聞かせようとして、
真実の顔は益々紅潮した。

不意に浮かんだ疑問を真実は首を左右にして振り払うが、
その疑問が木霊するのが消えない。

例えばあの彼なら―――
白夜という男性なら、どんなふうに女を抱くのだろうか。
全ての恋愛が失恋であるからこそ
繰り返し繰り返し、祈るように繋がりを求めると言う彼ならば。

「………っ……」

逢ってもいない男に対して、いったい何を考えているのだろうと
真実は自分の頬を軽く二三度叩いた。

それは、出会いとも呼べないような出会い。

これ以上考え続けると如何にかなってしまいそうで、
真実はシャワーを浴びにバスルームへと向かった。
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