ティラミス
20代のティラミス
終着の東京駅。
上京して初めて降りた駅だった。

新潟と東京は1本の新幹線で繋がっている。
けれども、在来線は違う。
東京駅の乗り換えで、
行き交う人に何度もぶつかる。
人ごみを歩き慣れなくて、何度もぶつかるけれど、
すみません、の言葉は、相手の耳に届かない。

駅構内を端から端まで歩いて、
なんとか「中央線」の文字を探し出す。
ぱんぱんの膨れたボストンバックを肩にかけ、
一緒にエスカレーターでホームに上がると、
ちょうど、全面オレンジ色の電車が滑り込んできた。

どこまでも長い。
なんだか「はらぺこあおむし」みたい。

私がよく知る羽越本線の3両編成の電車とは、全く違う。
オレンジ色の電車には、
私がよく知る電車の入り口にある
「開」「閉」のボタンも見当たらない。

乗降車の度に、自らドアを開けないで乗れるってこと?

誰も説明してくれない。
高校を卒業したばかりの私を言い知れない不安が襲う。
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