セックス·フレンド【完結】
やがて、詩織が粗品用のフェイスタオルを何枚か手に戻ってきた。


ずぶ濡れで、髪の毛からもスーツからも水を滴らせながら突っ立ったあたしを、他のお客や従業員たちが訝しげに眺めている。


「バスタオルがあればいいんだけど…。これで我慢してね?大丈夫?寒くない?風邪ひいちゃうわよ」


詩織が一生懸命あたしの肩や髪の毛を拭いてくれている。


「一体、何があったっていうのよ…」


しきりに心配する彼女にに、あたしは、訊ねた。


「竹内ミキは、どこ?」


その瞬間、詩織の動きがぴたりと止まった。


「竹内ミキはどこよ?!」

興奮して叫んだあたしの声で、店内がしぃんと静まり返る。


「美杉…落ち着きなさいよ」


詩織がおろおろと周りを見渡す。


でも、あたしは、周りの人間の冷ややかな視線などお構いなしに声を振り絞った。


「ねぇ、竹内ミキをここに呼んでちょうだい。ねぇ…詩織、お願い」


詩織の細いウエストにしがみついて懇願したあたしに、詩織は小さく言った。


「竹内さんなら辞めたわ。彼女、結婚するのよ」

結婚?


そこで、あたしの意識は途切れた。
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