0の楽園
 そんでその可笑しな格好って言うのが
これまたなんて言うかあり得ない。

 制服を来ているのだ、うん。
同じ学校の同じ制服を…
女である日下部迷夢が
俺と同じ制服を着ているのだ。

 もちろん彼女は男子の制服と
女子の制服を常備しているわけではないから
それはつまり俺の制服であるわけだ。

 ふらふらと蛇行しながら家に帰る彼女の
半歩後ろを歩きながら一人考えを巡らせる。
蛇行っていうかむしろダンスなのかもしれないが
まぁそんなことはどうでもいいので
考え事に集中する。

 えぇっと、あぁそうだ
確かに、こいつには俺の制服を
勝手に着て出かける事が可能だ。
それはまぁ一緒に住んでるって言うか
住まわさせられてるって言うか
それはそうだから別に俺にとっては
たいした問題じゃない。

 だかな、何をどうしたら
日下部迷夢が俺の制服を着て
早朝ふらふらと出かけ、残りモノと
仲良く会話(笑)なんてことになるんだ?

「制服っ」

 彼女はくるんっと勢いよく振り返り
思った通りバランスを崩す。
あと半歩後ろにいたら彼女の腕を
つかめずに彼女は地面とも仲良しになれた事だろう

「なかった。」
「……あぁ、うん。」

 なんていうか彼女と話すときは
会話に若干の沈黙が生まれる
それはまぁ頭で考えないと
彼女の言ってる事が理解できないからだが
俺の頭がもうちょっとハイテクだったら
彼女の言葉をなんの戸惑いもなく
すんなりと理解できただろうか?

 いや、無理だ。

 つまり彼女はこう言っているのだ。
自分の制服が見つからなかったから
とりあえず俺の制服を着て
俺を探すために外へ出かけた、と。

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