記憶の向こう側
「きっと…思い出そうとするから辛いのよ。あなたにそれだけの悲しい出来事があったのかもしれない。」
看護師さんは、花瓶に小さな花を生けながら言った。
「そうね…、もう一度新しい自分を始められると考えたらどうかしら?」
「新しい自分…?」
私はボーっと窓の外を見ていたけど、その言葉に反応して、看護師さんと美しい花に目線を移した。
「そう。悪いことは全部無かったことにして。…とりあえずあなたの名前から考えてみない?」