記憶の向こう側
西の空が赤くなり始めた頃
玄関のドアをノックする音が聞こえた。
「勇樹…。」
ドアを開けると、洗いざらしのシャツに、シンプルなジャケットを羽織った勇樹が立っていた。
勇樹は私の顔を見ると、嬉しそうに微笑んだ。
「叶恵!準備、できたか?」
「うん、あとちょっと。」
「女って、ホント準備に時間かけるよなー。」
どうやら早く出発したかった勇樹は、ちょっとため息をつきながら玄関に上がった。
「準備できたら言えよ。」
「うん。」
私はさっきよりもせわしく動き始めた。