記憶の向こう側
何で分かったの…?
心の中の状態を言い当てられてしまって、私はきょとんとした。
すると、そんな私の様子を見た島川先生は、少し照れたように笑った。
「いや、この前の診察の時から、様子がいつもと違うから、気になってたんだ。…『一人で生きていく』って、言葉ではかっこいいけど、かなり大変だろ?」
「はい…。」
私…
退院してから本当に色々あった。
けど、悩みながらも生きているのは、私一人の力だけではない。
島川先生は、ふっと優しく笑った。
「一人で生きるって、実はできないんじゃないかって、俺は思うんだ。」
…え?
「誰も頼らずに肩肘張ってても、今度は自分が他人から頼られなくなる。人間は寂しさを感じる生き物だから、頼られなくなると、途端に弱くなるんだよ。一人で頑張ってるつもりでも、ただの悪あがきだよ。」
島川先生の話はぶっきらぼうな口調だったけど、内容は何故か共感できた。
「だから、本当につらいと思ったら、誰かに話さないとな。誰かのそばにいるだけでも、全然違う。」
「はい。」
私はまっすぐ島川先生の顔を見ながら、真剣に話に聞き入っていた。
「人間は支え合う生き物だ。『人』という字は、線が支え合っているだろ?」
「はい。」