この窓を飛び越えて…



頭を下げて後悔を噛み締めていた。



「ははっ…」



突然笑い声が聞こえ、わたしはまた隣の席の人を見る。



「斎藤っておもしろい。あってるよ」

「へ……?」

「俺は原田。お前の隣の席だから」



原田くんは「覚えておけよ」とわたしの頭に手を乗せた。


頷かずにはいられなくて、遠慮がちにそうしたわたしに原田くんはまた笑ってくれた。

無邪気なその顔はすごく印象的で…



原田くん……覚えておかなきゃ…



そう思い、頭にそれをたたき付けながら、無意識に窓を見る。


そしてそこにあったはずの人がいなくなったことに気づき、肩を落とした。



仕方がないですよね……



分かってはいるが、現実は過酷だ。

名残惜しげに視線を送りながら座ったときにちょうど始業のチャイムがなる。


“窓辺の人”も戻ってきた。

席についた途端、怠そうにあくびをして、頬杖をする。


眠たそうな仕種一つ一つに笑みが零れた。


一度くらい、会って話したいです…。



そんなのが今のわたしの一番の願い事だ。





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