秘書室の言えなかった言葉
「原因?」

「……浮気」


私は言っていいのか迷ったが、原因を話す。

英治は佐伯さんの事、憧れている。

だけど、もうヘンに黙ってまた誤解をされたくない。

英治と気まずくなりたくない。

私が別れた原因を話すと


「そっか……。ごめんな、嫌な事聞いて」


英治は申し訳なさそうな表情をしながら、私の髪を撫でる。


「英治、大丈夫?」

「ん?何が?」


英治は優しく私を見つめる。


「えっと、その……。専務の事、憧れていたから……。こんな話聞きたくないんじゃないかなって……」

「俺、佐伯さんの仕事に対する姿勢とか、仕事に関しては憧れているし、尊敬しているけど……。あの人の女性に関する考え方は理解出来ないから」


英治は苦笑いしながら言う。


「そっか……」


英治、誠司のそういう所、知っていたんだ……


私もつられて苦笑いになる。


「なぁ、知里……。もう隠し事はナシだからな」


英治はそう言うと、私のおでこに自分のおでこをコツンと当てる。


「うん。ごめんね」


そして、見つめ合う私達。

そのまま私達は、自然と口づけを交わす――…


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