秘書室の言えなかった言葉
その瞬間、そのまま強く引き寄せ、強く抱きしめ、英治は私の首元に顔を埋める。

そして、私の首元に優しくキスをする。

さっき、怒っていたのなんて嘘みたいな、すごく優しいキス。


「え、えいじ?」


英治の態度に戸惑う私。

そんな私に


「消毒……」


そう言って、私の首筋をそうように、たくさんのキスをする。

そして、


「他、どこ触られた?」


そう言う英治の真剣な目に、吸い込まれそうになりながら答える。


「もうないよ?」

「本当に?」

「うん」


私の返事に英治はホッとしたのか、優しい表情になる。

だけど、また真剣な表情に変わり


「もう……、絶対に他の男になんて、触れさせたくない……」


そう言って、またぎゅっと抱きしめる。


「ごめんね」


英治の胸の中で謝る私に


「俺から絶対に離れるな。俺の側にいてくれ。頼むから……」


英治は、抱きしめる腕の力を強めた。


誠司の事で、たくさん心配をかけてしまった。

それに、誠司の事を黙っていたら、余計に気まずくなった。

英治に心配を掛けたくない。

そう思っていたのに、余計に心配を掛けてしまった。


全てを話す事がいいとは限らない。

だけど、ちゃんと話した方がいい事もある。

これからも、一緒に居たら、こういう事があるかもしれない。

だけど、その時は、隠さずちゃんと話しをしよう。

私はそう心に誓う――…


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