秘書室の言えなかった言葉
「ねぇ……、なんで、それを?」


盛り上がっている後輩達に尋ねてみると


「あぁ、あの時、園田さん、結構飲んでいましたからね」


後輩達は顔を見合わせ、にこにこ笑っている。


「あの時って?」

「3月末にした歓送迎会の日ですよ!あの時の倉木さん、かっこよかったよねぇ」


一人の後輩がそう言うと、他の後輩達も頷いている。


いや、だから……


「その時、倉木が何か言ったの?」


あの日、英治は誠司から、私と誠司の関係を聞いた。

それから、英治とすれ違ってしまったのだけど……

気持ちがすれ違っていた時は、すごく辛かった。

今思えばだけど、あの事があったおかげで、英治との距離がもっと近付けた気がする。

私があの時の事を思い出していると


「酔ってふわふわしている園田さんの事を、抱き抱えて、連れて帰ったんですよ。その時、倉木さん、園田さんの事“知里”って呼んでいましたよ。
二人が帰った後、『二人は付き合ってたんだっ!』って、みんなで騒いでいたんですよ」


と、話す後輩達はやっぱりにこにこ笑っている。


< 119 / 131 >

この作品をシェア

pagetop