秘書室の言えなかった言葉
英治の部屋につき、リビングでくつろぐ。


「理生ちゃん綺麗だったよね」


デジカメで撮った写真を見ながら話す私。


「知里のドレス姿の方が綺麗だよ」


英治はサラッとそんな事を言う。


「ちょっ、な、何言ってんの!?」


いきなりそんな事を言うから、私の顔は真っ赤になる。

“英治も同じ気持ちだったらいいな”

そう思ってはいたけど。


英治は“いずれは”とは言ってくれていた。

だけど、普段の英治の態度を見る限り、結婚の事を考えているとは思わない。


だから、きっと、今の言葉に、特に意味はないんだよね?


だけど、


「知里のドレス姿……、早く見たいな」

「えっ?」


英治の顔を見ると、すごく真剣な顔をして私を見つめていた。

そんな英治にドキッとする。


「知里と付き合いだした頃から、“いずれ”とは思っていたんだけど。佐伯さんの事があってから、考えていたんだ」


そう言うと、黙る英治。

その沈黙が、余計に緊張させる。

ドキドキしながら、英治の次の言葉を待つ。


「なぁ、知里……。一緒に暮らさないか?」


いきなりの事に頭がついていかない。

そんな私の両手を握りしめに


「結婚しよう」


英治はまっすぐ私を見て、そう言った。


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