秘書室の言えなかった言葉
「あっ、園田」


俺の好きな人がそこに居る事に気付き、自然と笑顔になる。


園田 知里。

同期で同じ秘書課。

3年くらい前に秘書課に異動になった俺とは違い、園田は入社時から秘書課に配属されている。

だから、園田は同期だけど、秘書としては俺より先輩だ。


園田は俺の所まで歩いて来て


「相変わらず、モテモテだねぇ」


俺の腕をポンッと叩き、笑いながら言う。


いつも、そう。

俺が告白されている現場を見ても、いつも平然としているし、こうやって笑っている。

園田は俺に全く興味がないんだ。


俺、結構わかりやすいくらいに、アピールしているつもりなんだけどな……


「ってか、園田だってモテるだろ」


俺は園田の顔を覗き込みながら言う。


「そ……そんな事ないし!」


園田は俺からパッと視線を逸らし、歩き出す。


「はぁ……」


俺は無意識にため息が出た。


コイツ、モテるのに、本当に自覚ないよな……


園田は身長が低く、見た目も童顔で、俺の欲目無しでもすごく可愛い。

守ってあげたくなるようなタイプ。

そして、よく告白されているらしい。


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