秘書室の言えなかった言葉
そして、夜――…


仕事が終わるのが遅くなった真人と俺は、遅れて歓送迎会の行われているお店へ。

真人が「先に始めてていい」と言っていた為、俺達が着いた頃には、もうみんな結構飲んでいた。

と言っても、重役の人達と、秘書達の飲み会。

結構飲んでいるとはいえ、そんなバカ騒ぎをしている人はさすがにいないが……

みんな顔を赤くして、楽しそうに飲んでいる。

俺は真人と空いている席に座り、知里を探す。

後輩達と楽しそうに飲んでいる知里をすぐに見つけたのだが……


アイツ、大丈夫か?


知里は付き合い程度に飲めるくらいで、あまりお酒は強くない。

だから、こういう飲み会があっても、いつもはウーロン茶やジュースを飲んでいるのに。

今、知里の手には綺麗な色をしたカクテルの入ったグラスが。

しかも、知里の頬はほんのり赤くなり、目もとろんとしている。

俺が側にいない時は、あまり飲むなと言っているのに……

知里は職場で、いつもしっかりとしていて仕事が出来ると思われている。

だけど、酔うと一本線が抜けたように、ふにゃっとなり甘えてくる。

シラフの時は二人きりの時でも、あまり甘えてこないのに。

まぁ、俺もそんな知里が可愛いなんて思っているのだけど。

職場の人間には見せない、俺だけが知っている知里の姿だったのに。


誰にも見せたくなかったのに……


知里の周りには後輩。

しかも女の子ばかりの中で飲んでいるのだけど、酔って無防備になっている知里に、少しイラっとする。


< 66 / 131 >

この作品をシェア

pagetop