秘書室の言えなかった言葉
「そんな気になるなら、隣に行って来いよ」


俺のイライラに気付いたのか、真人は笑いながら言う。

周りの人間には話していないが、真人だけは知里との関係を知っている。

だから、こんな事を言ってきたのだけど。

でも、


「今、俺が行ったらバレるだろ」


周りに聞こえないように、小声で真人に言う。


「お前がいいのなら、それでいいけど……。今の園田さん、隙だらけだぞ?今だって……」


真人に言われなくてもわかっている。

後輩達と楽しそうに飲んでいたはずの知里の隣に佐伯さんが。


っていうか、知里と佐伯さんの距離、近くねぇか?


俺はイライラしながら、知里と佐伯さんの方へ。

そして、


「佐伯さん、あっちで飲みましょうよ」


と声を掛ける。

仕事の面ではやっぱり憧れている。

だから、久しぶりに佐伯さんと仕事の話をしたかった、っていうのもあるけど。

知里から佐伯さんを離したら、俺のイライラも少しは落ち着くかな、そうも思っていた。


「おっ、倉木。今、終わったのか?」

「はい。さっき社長と一緒に来ました」

「そうか」


俺に向かってそう言った佐伯さんは知里に向かって


「じゃぁ、また後で」


と、にこっと笑顔を見せ、知里の肩に触れる。


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