抹茶な風に誘われて。
 ――優月ちゃんに、私のこと話したってことは、ないよね……?

 まさか今日の優月ちゃんの欠席は、そのせい?

 でも、それなら優月ちゃんの性格上、私に何か言ってきてもいいはずだ。

 電話をくれたということは、あの後すぐ別れたのかな――そこまで考えて、まただ、と頭を抱える。

 考えたくないのに、やっぱり考えてしまって、結局たどり着くのは、あの時の――キス。

 時が経つにつれてどんどん気持ちは沈んでいって、胸が痛むようにまでなっていた。

 静さんは不意をつかれただけだ。そんなことわかっているはずなのに、どうして思ってしまうんだろう。

 ――どうして、キスなんかさせたの。

 なぜ、避けられなかったの、なんて――。

 あの唇が、自分以外の人に触れられたのだということが、こんなにショックなことだなんて知らなかった。

 いつのまにか唇を噛みしめながら、みんなに気づかれないよう、必死で涙を堪えていた。

 泣く資格なんてない。

 私が、こんな風に泣いたりする権利も――。

 自分がもっと早く優月ちゃんに打ち明けていたら、静さんに話せていたら、もっとどうにかなっていたはずで。

 それなのに優月ちゃんの『本気』を止めることなんて、私に許されるのだろうか。

 そう考えてしまったら、それ以上耐えられなくなって、ついに席を立っていた。

「か、かをるちゃん……どうかしたの?」

「なんか顔真っ青だけど――具合でも悪い?」

 心配してくれたクラスの子たちに、申し訳ないとは思いながらも、私は反射的に頷いていた。

「ごめん、今日は早退するね」

 風邪かもしれない、なんて嘘までついてしまった自分に自分で驚く。

 でも、本当に気分まで悪くなっていたから、駐輪場までの距離さえ、すごく遠く感じた。
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