抹茶な風に誘われて。
「なんか元気ないけど、どうかした? もしかして猫の耳とか本当に嫌だったら、外してもいいようにあたしが優月に言ってあげようか?」

 優しく覗き込んでくれた瞳に、今まで隠していた気持ちがあふれそうになる。

 咲ちゃんになら話してもわかってくれるかもしれない。

 今のうちに――もっと言いにくくなる前に、静さんとこれ以上こじれてしまう前に、話してしまおうか。

 喉元まで出てきた言葉を、私が口にしようとした瞬間だった。

 きゃあきゃあ、という騒ぎ声がして、優月ちゃんが取り囲まれたのが見えたのだ。

「うっそお、マジでえ?」とか「優月、やるう!」なんて言いながら、みんなが何事か囁き合っている。

 まさか――そう思った私に気づくわけもなくて。

 優月ちゃんは頬を赤く染めながら、髪の毛を自分の指に巻きつけたり、離したりしながら頷いた。

「そう。今回はさ、結構本気で頑張ってみようかと思って……自分から奪っちゃった」

 ただごとではない会話の内容に、咲ちゃんも耳を傾けている。

 衣装のことをまだ気遣ってくれる言葉に違うと答えたら、気にしながらもまた優月ちゃんのほうへ戻って行った。

「何、何? どういうこと?」

「優月、例のハーフ美形の唇奪っちゃったらしいのよ! すっごい積極的だと思わない?」

 訊ねた咲ちゃんに代わりに答えるクラスメイトの子。

 本人の言葉ではなかったけど、私は後ろを向くこともできなくて、固まっていた。

 さっき打ち明けようとした言葉も、勇気も、急激にしぼんで、消えていく。

 あの時の光景がまた蘇ってきて、何度も何度も頭の中でリフレインされる。

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