抹茶な風に誘われて。
「それでそれで? 反応はどうだったのよ」

 注目するみんなの質問で、優月ちゃんがしばらく黙っていてから答えるのが聞こえた。

「えー実は結構冷たく門前払いって感じだったんだけど、あきらめないって言っちゃった。ショックはショックだったけどさ、考えてみたらあれだけの美形がそんなに簡単に振り向いてくれるはずないじゃん? でも好きになっちゃったから……マジで頑張ってみるつもり」

 照れくさそうに、でも力強く打ち明けられた想いに、静かだった教室がざわめいた。

 拍手が沸き起こって、優月ちゃんの背中を叩いたりしながら、みんながなぐさめだしたのだ。

「ちょっとあたし感動―! 応援するからさ、頑張ってみなよ」

 涙もろい咲ちゃんが、目を潤ませながらそう言うのが見えて、私はそれ以上その場にいることができなかった。

 盛り上がっているみんなに気づかれないよう、そっと後ろの扉から外へ出る。

 廊下を走って、非常階段に出て、手すりにもたれてからやっと声が出せた。

「……どうしよう」

 あんな状況で、付き合っているのが自分だなんて、言えるわけない。

 みんなが応援してるのは優月ちゃんで、私の気持ちなんて気づくはずなくて――。

 全部言えないでいる自分のせいだとわかっているのに、苦しくて。

 本当はすぐに叫びたい。ごめんねと謝って、打ち明けたい。

 そう思うのに、ただ震える膝を抱えてしゃがみこんでいることしかできない自分。

「静さん――」

 やっぱり電話をとっておけばよかった。

 素直に相談しておけばよかった。

 飛び出したりしなくて、向き合っていれば――。

 後悔があとからあとから沸いてきたけれど、一つ思い出した事実が棘のように心に刺さった。
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