抹茶な風に誘われて。
 我ながら腹の立つほど言い当てられていて、答える言葉が見つからなかったのだ――という本音など、誰にも言うつもりはない。

 正直、今までくさるほど女とは付き合ってきたが、かをるのようなタイプは初めてで、自分でも戸惑っているのだ。

 真っ向勝負で告白してきたかと思ったら、そのまま逃げ出す。かと思えば、素直な気持ちをぶつけてきて、相手の心を捕らえる。

 それならば、と本気で付き合ってやろうとしたら、携帯電話の番号を知っているにも関わらず、電話の一本さえ来ない。

 約束はいつも俺から取り付けて、メールを送ればそれに対する返信のみ。

 あんまり音沙汰がないから電話をかけてみれば、「会いたい」と泣きやがる。

 その気になってキスしても、受け入れはするものの、その次など全く考えていない顔をして、首を傾げる。

 一回り以上年下の少女に振り回されているのは、俺のほうだ。

 無理やり襲うほど自分を抑えられないわけでもないし、と今のところ留まってはいる。

 それは別に構わない。だが――そういった行為なしでの付き合いなど今までやったことがないから、他にどうすればいいのかわからない。

 かをるを退屈させてはいないだろうか。やはり同年代の男のほうがよかったと、そう思ってるのかもしれない。

 そんな考えが浮かび始めていた時、あの事件が起きた。

 俺からしてみればキス程度のことなど蚊に刺されたよりもどうでもいいレベルの話だったが、かをるに見られてしまったのがまずかったのだ。

 そもそもあの女のけんかを仲裁したような形になったのさえ、自分の意にそぐわぬ話だったのに、それをどう勘違いしたのか何なのか――ガキ特有の思い込みで俺を追い回し、茶道のクラスにまで入り込み、騒ぎ立てる。

 一番鬱陶しいタイプの女が、かをると同じ高校に通っていることがわかって、下手に刺激するわけにもいかないからと仕方なく流すだけにした。

 
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