抹茶な風に誘われて。
「写真の中には、静さんと映っているものもあって……先生が、この人物は誰か、どういう関係かって厳しく聞くんです。噂では、私が年の離れた夜の世界の人と付き合っているって耳にしたけれど、本当なのかって。それで――私、正直にお話しました」

 わずかに見開いた瞳を向けると、潤んだ瞳で苦笑し、視線をはずした。

 太陽の光が反射して、きらきらと輝く波の様子を見つめながら、続ける。

「馬鹿、ですよね、私……でも、嘘をつくことなんてできなくて。それに、悪いことなんてしていないから、言ったんです。静さんと私はお付き合いしていて、亀元さんたちは私の大切なお友達だって。そうしたら、先生たちがみんな眉をひそめて、口々に非難されて――叱られました」

 そんな輩とはすぐに付き合いをやめろ、真面目な君が一体どうしたんだ、一回り以上年の離れた怪しい人物と付き合うなんて、騙されていると思ったほうがいい――。

 その後苦しげにかをるが話した内容は、当然すぎるくらいの言葉の数々。

 俺からしてみれば予想がつくようなものだったから何とも思わなかったが、次に続いた言葉で顔を上げた。

「親を呼んで話をしようって言う先生がいて、それからすぐに施設育ちだってこと担任の先生がお話して……そしたら、そらみたことか、なんてため息混じりに言われたりして。すぐに素行を正さなければ、奨学金を打ち切る可能性だってある。最悪の場合は退学だって考える、そう通告されてしまって」

 ショックで授業も耳に入らず、気づいたら昼休みになっていた教室から飛び出していた――また涙目になったかをるが話を終える。

 受験生確保のために、イメージを大事にしている先生たちの判断は理解できるし、自分が誤解を与えたのなら反省しなければいけない。

 でも、と相変わらず甘っちょろい言葉を吐いているかをるに、俺は内心苛ついていた。
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