抹茶な風に誘われて。
 こんな風に写真まで隠し撮りされて、どうしてこの可能性に気づかないのか。

 教師たちの論理が、生徒に対する純粋な心配から来ているものだと疑いもしないのか。

 なぜ突然、極論とも言える退学、などという決断までが飛び出すのか。

 本当にこの少女には、全く考えも付かないのだろうか――。

 あきれはするものの、それが九条かをるという女の純粋すぎる生き方なのかとため息をつく。

 吹き付ける海風になびくふわふわした髪を押さえて、憂いをそのまま覗かせる透明な瞳を俺に向けた。

「静さん……? ごめんなさい、やっぱり心配させてしまいました、よね。本当はこんな風に呼び出したりするつもりじゃなかったんです。でも、気づいたら静さんの番号を押してて――」

「――だから、お前と一緒にするなと言っただろうが」

 泣きそうな顔で謝罪するかをるの言葉を止める。

 これ以上聞いていられない、という苛つきが顔に出たのか、すぐに不安な瞳が見上げてきた。

 予想済みの反応に苦笑して、軽く頭に手を置いてやった。

「俺はそんなに繊細じゃないって言ってるんだ。そこまで気に病む必要はない。で、結論は? いつまでに答えを出せ、とかそういう話をされたんだろう」

 平常心そのものの表情を見て、逆に困惑したような顔でかをるが頷く。

 明日、親代わりの藤田葉子を呼んで、話し合いをしようと言われたこと。

 時刻は午後四時、場所は生活指導室、そしてその結果次第でかをるの処遇を決める、という流れになっていること。

 必要な情報だけを聞き出して、俺は笑った。

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