抹茶な風に誘われて。
 ――くそ、また邪魔が入ったか。

 なんて内心舌打している俺には気づかず、目の前の少女が微笑んで。

 幸せそうな瞳が、薬指に輝くダイヤの花を映す。

 俺が贈った、所有の印――未来への、約束。

 普段は付けないそのリングを、こうして時折大事そうに指にはめるかをる。

 自分でも予想外の展開に、正直照れくさいような、落ち着かないような気分になる時もある。

 それでも、と細い手を包んだ。

 ――こんな面白い女、誰にも渡してたまるものか。

 正直な気持ちは誰にももらしはしないけれど、考えれば浮かんでくるこの感情は、確かに満足という名のものなのだろう。

 月に見惚れるきらきらしたかをるの瞳。

 俺にとっては月より魅惑的なその輝きに吸い寄せられるように、そっと顔を近づける。

 周りの目を盗んで味わったかをるの唇からは、今飲んだばかりの抹茶の味がした。
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