抹茶な風に誘われて。
 手紙には、造園会社を発展させて、海外に日本庭園をプロデュースする仕事が成功したこと、本社をフロリダに構え、現在は家族でそちらに滞在していることなどが簡潔に書かれていた。

 施設の先生に問い合わせて、ここの住所を教えてもらったことも――。

「ようやく君を招待できるくらいの余裕ができたよ。だから、一度遊びに来てはくれないだろうか……だって。おじさん、私のことなんかずっと覚えていてくれたんだ」

 読み上げて、一人呟いてから、涙があふれる。

 裏切られたと泣いていたことも、おじさんが本当に大好きだったのだと認められたことも、自分の勝手な葛藤だと思っていた。

 なのに、おじさんはずっと自分を忘れずにいてくれたのだ。

『追伸、今度僕の使いをよこします。詳細はその時に』

 そんな一文に首を傾げたけれど、気がすむまで泣いてしまえば後はもう嬉しくて――封筒に大事にしまった手紙は、いつもつけている一言日記帳の中にはさみこむ。

 とにかく、心を落ち着けたらちゃんと返事を書こう。

 忘れないでいてくれてありがとう、と。自分のために心を砕いてくれたことを感謝しよう。

 そう決意した後に、ぶるっと震えた携帯を見やる。

 短いメールに顔を綻ばせて、返事を打った。

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