抹茶な風に誘われて。
 ――なんだ……よかった。

 心配と不安が渦巻いていた心が、ようやく軽くなる。

 静さんとすれ違ったままだから余計に悩んでいたのが、解決した気分だった。

「ううん……静さんはちゃんとわかってくれると思うから」

 首を振って答えると、アキラくんも「よかった」と微笑む。

 ほっとした途端、屈託のない瞳を少し睨んでしまった。

「それならちゃんとそう言ってくれればよかったのに。アキラくんも人が悪いんだから」

 ずっと迷って、悩んで――静さんの番号を押しかけた指は、結局自分の欲求に負けてしまった。

 知りたい、とずっと心の奥に秘めていた気持ちを抑えることができなかったのだ。

「で、でも……教えてくれるって本当なの? その――」

「お前の両親のこと、だろ? 本当だよ、もちろん。そんなことで嘘つかないって」

「じゃあ……!」

 思わず詰め寄りかけた私に、両手を前に出したアキラくんが笑う。

「ストップ! 一応条件も本当だから。言ったろ? 一日付き合ってくれたら話すってさ。ほら、行こうぜ――東京見物ツアー!」

 冗談めかして叫んだ声に、周囲の人々から注目の視線を浴びてしまった。

 いたずらっぽく舌を出したアキラくんに引っ張られ、待ち合わせで賑わう銅像前を抜け出す。

 ――ごめんなさい、静さん。今日が終わったら、ちゃんと話しますから。

 それでも消えない奇妙な罪悪感に、私はそっと心の中で謝っていた。
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