抹茶な風に誘われて。
 渋谷マークシティ、109、センター街、等々。

 若者のあふれる場所ばかりを選んで歩くアキラくんに、必死で付いていく。

 といっても別に早足で歩いてるわけでもなんでもなくて、ただ次から次へと色々な店へ入っては服を物色したり、店員さんともにこやかに話したりする彼に付き合っているだけだ。

 それでも人の多いところがそもそも苦手な私には正直苦痛で、自分が着ないような派手な服ばかりを選んで合わせてきたりするアキラくんに辟易していた。

「ああ疲れた……静さんなら、こんな賑やかな場所選ばないのに。なーんてまた考えてんだろ」

 コツンと頭を突付かれて、思わず顔を上げた。

 どうしてまた考えていたことがわかったんだろう、と驚いていたら、むくれた顔のアキラくんに睨まれた。

「お前って本当、嘘のつけないヤツなのな。どうせいつもはあの大人な彼氏とドライブだとか、美術館とか博物館とか、はたまたどっかの庭園で散策とか――そういう静かーなデートでもしてんだろ」

「……ど、どうしてわかったの?」

 今度こそびっくりしすぎて正直に訊ねる。

 目を見開いた私をあきれたように見て、さっき買ったサングラスをかけてみせるアキラくん。

「大体予想つくってだけだよ。あーあ、やっぱビンゴか。でもさ、俺らまだまだ十七だぜ? いっつもそんなんじゃ老け込んじまうって」

「老け……」

 顔をしかめたら、はずしたサングラスを私にかけて笑う。

「ま、今日は若者代表の俺と遊んでリフレッシュしろ。いいな?」

「う、うん――」

 夏の日差しみたいに明るい顔で笑われてしまっては、頷くほかなくて。

 私はいつしか自然にアキラくんと歩いていたのだった。

 施設にいた頃の思い出話に花を咲かせたりしながら、歩き疲れた足を休める頃にはもう昼食の時間。

 静さんとは入ったことがないファーストフード店で向かい合うと、アキラくんがハンバーガーを頬張りながら顔をしかめた。
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