抹茶な風に誘われて。

Ep.8 真実

 静さんのところへ行かなければ――そう心は急くのに、こういう時に限ってまるで妨害するように行事が訪れる。

 懇談週間、という名の親子面談が終わったら、クラスメイトは翌週にやってくる修学旅行の話題で盛り上がっていた。

 ちょうど前日に母代わりとして葉子さんに来てもらって、進路の予定などを相談した後だったから、あまりその中に参加する気にはなれなかったのだけれど。

「ねえねえかをるちゃんは自由行動、どこ行きたいー? やっぱあたしは韓流、ホン様の撮影地ツアーかな」

「えー優月ってば、もしかしてああいうの好きなの?」

「古っ! 韓流って、もう終わったんじゃなかったのー?」

「うるさいなーかっこよければブームに終わりも何もないの! イケメンは国境なんて関係なしよ! あ、それとおいしい料理もね。韓国っつったら焼肉とキムチでしょー。よっしゃ、食いまくるぞっ!」

「きゃはは、優月は花と団子両方必須だよね」

 笑いあうみんなの声に曖昧に頷きながら、私は修学旅行の日程表とため息混じりににらめっこする。

 四泊五日の韓国ツアー、それが藤棚高校の修学旅行だということは知らなかったわけじゃない。

 決して安くない修学旅行代を葉子さんたちに負担させてしまうことが心苦しい、というだけがため息の理由じゃなくて――。

「やった、かをると同じ班じゃん。俺、韓国初めてだから楽しみにしてんだ。一緒に色々回ろうなー」

 何気なく肩に手を回されて、すっと立ち上がる。

 空振りしたアキラくんが、恨めしそうに口をとがらせた。

「別にいいだろ? 昔馴染みのスキンシップぐらいさー。冷てーな、かをるは」

 文句を言うふりをしながらまた近づいてくる彼は、あくまで親しい友人の域を出ない行動しかしなかったから、強気で拒絶することもできない。

 最初から豪語していた私を『ハニー』にするとかいう発言はいつの間にかクラスメイトにも冗談だったと流されてしまったようで、優月ちゃんも呆れ顔でちらりと見ただけだった。
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