抹茶な風に誘われて。
『あんな男が、お前に本気になるわけはない』

 アキラくんが何度も言った言葉が脳裏に蘇る。

 数多くの女性の写真から一枚を抜き取って、見せられたのは、中でも一番美しい人――綾子さんだった。

 静さんが本気で愛したっていう話を聞かされて、最近連絡がないのは彼女とヨリを戻しているんじゃないかって、調査の裏づけか何かと一緒に説明されたのだ。

 もちろん頭に入るわけなんてなくて、連れられるままに静さんの実家まで行ってしまった。

 二人一緒のところを見たときには頭が真っ白になったけど、結局あれは誤解だったってことがわかったのだから、静さんに対する悪印象を払拭すべく私も頑張って話をしたりした。

 でもアキラくんは聞く気がなかったみたいで、それからは静さんの話にも触れなくなってしまったのだった。

 両親のお墓に付いて来てくれた時、泣いてる私の肩を優しく抱いてくれたあのアキラくんは――あれこそが本当の彼だって思いたいのに。

 再会してから、どうも彼が考えていることがわからなかった。

「かをるちゃん、大丈夫? 車酔い?」

 最初の撮影地に到着して、停まったバスからまだ動かない私を心配してくれる咲ちゃん。

 あわてて首を振って、はしゃぐ優月ちゃんの後を追った。

 ――やっぱり、もう一度アキラくんとちゃんと話そう。心配してくれたお礼を言って、それから静さんのこともわかってほしい。そしておじさんに手紙を書くんだ。

 まだ今は無理だけれど、いつかきっとお金を貯めてアメリカに会いに行くって。

 そう決意したら、重かった胸が少し軽くなった。
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