抹茶な風に誘われて。

Ep.10 計画

 修学旅行三日目、ついにやってきた自由行動の日。

 朝からわくわくしていたらしい優月ちゃんは、班ごとに分かれてバスに乗り込む時からご機嫌だった。

 有名な韓国ドラマの撮影地を巡るというこのオプションツアーは、ショッピングや民族村などの他のツアーの中で、一番生徒たちには不人気なものだったらしい。

 でもなぜか付き添いの先生たちの数――しかも女性の人数は他のツアーよりも少し多かった。

 いくつかある撮影地の中で、最終の目的地である小さな島では、もしかしたら何かの撮影が見られるかもしれないという噂だった。

 他のクラスの子や先生たちも併せて、総勢三十名ほどでバスに揺られていた道中で、優月ちゃんが私に囁く。

「なんかさあ、もう彼あきらめたみたいじゃない? かをるちゃんのこと口説くの。あっちのグループですっかり合流してるし」

 ピンクの綺麗な爪で指差すのは、他のクラスの女子たちと笑っているアキラくん。

 バスの後部座席でどっかり腰を下ろして、何やらアメリカのドラマ話に花を咲かせているらしかった。

「そりゃあいいかげん自覚したんじゃないの? いつまでも言ってたってかをるちゃんがなびくわけないってわかったんだよ。ね? もう気にすることないよ、かをるちゃん」

 咲ちゃんまで言ってくれて、私は頷く。

 アキラくんの気持ちはよくわからなかったけれど、本当はそれよりも気になっていたことがあった。

 東京見物に付き合ったあの日、誘われたアメリカ旅行の話。

 おじさんもぜひにと言っているからって、熱心にその後も話をしていたアキラくんが、なぜか近頃話題に出さなくなったのだ。

 やっぱり旅費を出してもらうわけにはいかないって断り続けた私の意志を尊重してくれたのならいいのだけれど――もしかして怒らせてしまったんだろうか。

 私のためだと言ってはくれたけど、静さんの過去や家を調べて連れて行ったりしたアキラくんは、正直少し、いやかなり怖かった。
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