抹茶な風に誘われて。
「心配しなくても、俺は別のコテージに泊まるから。それに――残念ながら、一人じゃないんでな」

「えっ、一人じゃないって……」

 驚くかをるの耳元で囁く。

 その答えにようやく緊張が解けたかのように、おかしそうに笑う――少女の心が壊されなかったことで、何よりもほっとした。

「えーっ、だったら一緒に朝まで盛り上がろうよーねえ、先生!」

「あっちはアルコールで盛り上がるようだし、お前らの出る幕はないと思うぞ」

 しつこく誘う優月を一蹴して、俺はかをるの頭を軽く叩いた。

「残りの修学旅行、楽しめよ」

 明るい空気が戻った部屋で、かをるはすっかりいつもの調子を取り戻したようで。

 俺の言葉に嬉しそうに頷いた。

「それから――日本に帰ってから、一緒に来てほしい場所があるんだ」

「え、一緒に……?」

 一瞬不安げに揺れたこげ茶色の瞳に、心配はないと笑ってやる。

「……頑固親父の見舞いにな」

 複雑な思いを閉じ込めて答えたら、かをるの瞳に涙が盛り上がった。
 
< 322 / 360 >

この作品をシェア

pagetop