抹茶な風に誘われて。
「もったいない、どうして朝までかをるちゃんと過ごさなかったのお?」

「そうだよー俺たちのこと気遣ってんなら、別にいいのに。俺らだけで韓国エンジョイしてるからさ」

 遅めの夕飯として外でバーベキューを囲みながら、早速俺を迎えたアホ面たち。

 金に近い茶髪はオフで旅行中だというのになぜかいつも以上に張り切ってワックスであちこちはねさせてあった。

「バーカ、静は一応オトナなんだから、あんたみたいな常識なしとは違うの。まがりなりにも高校の修学旅行中に、どこのどいつが泊まってくんのよ。そんなことしたらあっという間に教師どものいい餌になっちゃうでしょーが」

 日本だろうが韓国だろうが、どこでも関係なしにスパスパとタバコを吸いながら冷めた声を出す香織に、妙なアロハシャツを着込んだハナコが笑った。

 寒くないのか、という常識的な疑問は、既に酒で赤く染まった頬を見て愚問だろうと飲み込んだ。

「まあそりゃあそうだけどねー。でもそれを言っちゃあ、あの白井アキラなんかどうなんのよ。修学旅行の最中によりによってかをるちゃんを襲うなんていう大胆な愚行をやり遂げようとするんだから。ねーっ? 静ちゃん!」

 小指を立てて訴えてくるハナコに顔をしかめつつ、俺は無言でビールの缶を受け取った。

 さっきコテージから戻る道際、事の次第は話してあったからもう触れたくはなかったのだ。

 まだ握った手が震えそうになるのを抑えていたから。

「でも、間に合ってよかったよなー。そうじゃなきゃあいつ絶対静に殺されてたって。日本海に沈められてたかも。はーよかった、かをるちゃんが無事で!」

 しっ、と香織が人差し指を立てて注意するが、駄目元のアホ面と大声は留まることはない。


< 323 / 360 >

この作品をシェア

pagetop