抹茶な風に誘われて。
「あんなこと言ってるけど、意外と優月には彼がお似合いなのかもね。ねっ? かをるちゃん」

 近くで振舞われている甘酒をみんなの分まで持ってきてくれながら、咲ちゃんが笑う。

 この後彼氏とデートなのだと幸せそうな笑顔で付け加えていた。

「どうだろう……でも二人が幸せになってくれたら、私は嬉しいな」

 思わず楽しい想像をしてしまう私は、急に吹いてきた寒風に身を縮める。

静さんがすぐに羽織を脱いで着せ掛けてくれながら、私の額に手をあてた。

「ちょっと微熱があるな、これはよくない。ほら、帰るぞ」

 いきなり断言されて、引っ張って行かれる私。

「えっ、ちょっ……静さん? 私、別に熱なんて――」

「いやある。絶対ある。お前は俺の手の平を疑うのか?」

「いっ、いいえ! そういうわけじゃ……」

「じゃあ風邪を引く前に帰ろう。いいな?」

「せっ、静さん――?」

 あたふたしながら強引に連れて行かれて、振り向いた先ではなぜか何かに納得したような香織さんたちの笑顔。

「はいはい、そういうことね」

「本当はもう少しみんなで楽しみたかったけど、しょうがないわねー。じゃあ、あとはお二人でごゆっくり! ムフッ」

 楽しそうに笑いながら手を振るハナコさんが、残念そうな亀元さんの首根っこを捕まえている。

 早速両手を腰にあてた優月ちゃんが何か言い含めているのが見えたところで、角を曲がってみんなの姿は見えなくなった。

「あ、あの……静さん」

 スタスタと歩き続けていた静さんのまっすぐな背中が、神社の鳥居をくぐったところでやっと振り向く。

 軽く睨みつけるような視線を向けられた後、額を指で小突かれた。
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