抹茶な風に誘われて。
「きっと、お母様にお似合いだったんでしょうね」

 私もそう続けて、二人で見つめるのはセピア色の写真。

振袖と一緒に送ってくれたその一枚には、浅黒い肌と背中まで垂れた美しい黒髪をした女性と、若かりし頃のお父様。

こちらも面影は静さんにそっくりで、口元に笑みを湛えながら、その女性――お母様の肩を抱いている。

 きっと同じグレーの瞳をしていたのだろう彼女が、幸せだったのだということは浮かべた花のような笑顔からよく伝わってきた。

「恋人同士のことは、二人にしかわからんということかもしれないな」

 なぜか皮肉げにそう締めくくった後、静さんは私の肩を抱く。

 まるで写真の中の二人と同じような仕草に、自然とくすぐったいような――それでいてとても幸せな気持ちになった。
 

 私の着付けを待ってもらって、みんなで近所の神社へと繰り出した初詣。

 とても上手に着付けてもらったおかげで苦しくもなく、屋台でいろいろなものをつまんだりしながらの時間は楽しく過ぎていく。

「やったーあたし大吉! これで今年こそはマジな彼氏ゲットってやつだねっ! 見て、ほら恋愛運――なになに? 待ち人はすぐそばにあり……?」

「それって、この中にいるってことじゃないのお? ほら、いつもぎゃあぎゃあケンカしてる金髪ホストとかさ」

 顔をしかめておみくじの紙とにらめっこする優月ちゃんに、ハナコさんが何食わぬ顔で囁く。

 遠くで大凶だと大騒ぎしている亀元さんを眺めて、優月ちゃんはぶんぶん首を振った。

「ちょっと冗談きっついハナコさん! マジ勘弁だってー! あたしは絶対誰もがうらやむイケメン彼氏作るんだからっ!」

「えー? 別にあいつなら顔は悪くないと思うけど? 中味がアホすぎるのが問題かもだけど」

 お正月を意識したのかおめでたい赤と白のストライプが入ったコート――どこで買ったのかと静さんが眉をひそめていたけれど――を着た香織さんにまでそう言われて、ますます優月ちゃんは長い袖を振りながら拒否していた。
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