「愛してる」、その続きを君に
「天宮くん?」
信太郎は改札口へと向かうその幼なじみの後姿を目で追っていた。
「ねぇ、天宮くんってば」
「あ、ごめん」
「どうしたの?急に怖い顔しちゃって」
児玉綾乃が心配そうに信太郎の顔をのぞきこんだ。
彼はその茶色がかった瞳を見つめた。
この目は光の加減によっては、黒にも茶にも、ある時には深緑にも見えることを彼は知っている。
この綾乃を見て、かわいい、そう思わない男はいないだろう。
現に彼女と一緒に歩けば、すれ違う男はみな振り返る。
こうやって一緒に過ごしていても、ふとした時に見せる表情や言葉の端々にかわいらしさを感じるのは間違いない。
しかし当の彼女には、自分の美しさへの自覚が欠落している、と彼は思っていた。
「えっと、どこまで話したっけ?」
「いつ家に来るかって話。次の日曜日なんてどう?」
「俺は何の予定もないけど」
「じゃ、きまりね。父にも言っておくから」
「…うん」
信太郎は先ほど綾乃が口をつけた自分のジュースを手に取った。
しかし、先ほど見たあの後姿をふと思い出して、飲むのをやめた。