箱庭ラビリンス


張り付いた笑顔に嫌悪を覚えながら次の言葉を選んでいると、相手が先手を打ってきた。


「どうやって僕の居場所突き止めたんだ?」


「菜穂姉に聞いたんだ」


正直に嘘なく言えば相手は怪訝な表情を浮かべ、考える素振りを見せた後、思いだしたかのように手を打った。


本当は忘れてなどいないくせに。


「――ああ、あのお節介な女ね。へぇ、よく教えてくれたね。僕のやったこと全部知ってる筈なのに」


「……――」


そう。一度は止められたんだ。けれど、私が無理矢理頼めば条件つきで教えてくれたんだ。


「で?何で僕の居場所分かるわけ?何で未来一人できたわけ?」


責め立ててくるような物言いにグッと息を飲む。


最も苦手とするそれで、最も私の涙腺を攻撃してくるものであった。もはや、条件反射なのかもしれない。



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