箱庭ラビリンス


ここで感情に飲まれたらそれこそ終わりだと歯を食い縛った。


「っ……か、母さんがお前の父さんと今でも連絡を取り合ってるらしい。……だから、菜穂姉が母さんに聞けば、アパートくらいすぐに分かる……それと、これは私とお前の問題だから一人で来た」


震えながらも、一つ一つ馬鹿正直に質問に答えて伝える。喉が詰まって、目の奥が熱かった。


潤む目で正面を見つめれば、相手は私を笑い、一歩前に詰めてくる。上から来る威圧感。


「それは知らなかったな。まぁ、あの日以来父さんとまともに話してすらいないけど。でも、未来」


「っ――!」


ゾワッと背中に悪寒が走る。拒絶反応。


頭に手を置くな。触れるな。そんな笑みを向けるな。


口を、開くな。


「結局お前は母さんに裏切られるんだな」


止めろ――……。







< 108 / 194 >

この作品をシェア

pagetop