光を背負う、僕ら。―第2楽章―
意を決して、玄関の重い扉を開けた。
「ただい…ま」
だけど玄関に見慣れない黒い革靴があるのを目にした瞬間、発した声が小さくなる。
お客さんが来てるのかな…?
明らかにお父さんのものではない男物の靴が、綺麗に揃えて置かれていた。
廊下の奥の扉が開く音がして顔を上げる。
「…おかえり」
「あっ、ただいま」
開いた場所からお母さんが出迎えてくれる。
だけどその表情に笑顔はなくむしろ張り詰めていて、ただならぬ空気を嫌でも察してしまった。
「佐奈に会いにお客さんが見えてるの。早く上がりなさい」
「あたしに?誰が?」
お母さんが息を飲む。
あたしの顔は、絶対に強張っているだろう。
「…東條学園の、学園長先生よ」
「…!」
……これは、あたしへのチャンスなのだろうか。
それとも、試練なのだろうか。
この展開にどんな意味があるのか分からないけれど…。
この機会を逃せばお母さんを説得出来ないということだけは、嫌でも感じとってしまった。