光を背負う、僕ら。―第2楽章―



お互いの邪魔にならないようにして、それぞれが自分の足で夢を掴みに行く強さを手にしよう。


それがそもそもの目的だったから、初詣でのときに話して以来は出来るだけ距離を開けて過ごしてきた。



だからメールも暗黙の了解のように、二人とも送らなくなった。



一度幸せな時間を知ってしまっているから、その期間が寂しくないと言ったら嘘になる。



だけど、我慢してその時間を作って良かったとも思えるんだ。



だって受験に向けてのラストパートの時間を、ピアノのことだけを考えて集中することが出来たのだから。



それに伸一からの応援メッセージも、久しぶりに来たメールだからこそさらに効果を増しているような気もする。



だからこれで良かったって、自信を持って思えるよ。



あたしはお守りが落ちないようにポケットの奥底に入れて、それから手袋をしながら歩き始める。



少しだけ自信を持てた気がしてぴんと伸びた背中を、伸一が押してくれているような気がした。





◇◆◇◆◇




受験会場に着いて受付を済ますと、最初に行われる筆記試験の教室に案内された。



大きな階段教室に、等間隔で受験生が座っていく。



あたしの席は真ん中の列の後ろの方で、その一つ後ろの席が小春ちゃんだった。



周りを見ると同じ制服を着た人が並んで座っているみたいだから、どうやら中学校ごとに纏まって並んでいるらしい。



先に席に座っていた小春ちゃんと目が合い、視線だけで挨拶を交わした。



ピリピリとした空気に圧迫されて、例え挨拶だとしても言葉を発せられるような状況ではなかった。



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