百物語

┣19本目 トイレの中で

淡々と語ってる君が一番おっかないような…。

いや、なんでもないよ。

んじゃ、俺の話だね。


こないだ普通の焼肉屋に行ったときだったんだけど…。


俺、腰悪くしてさ。

コルセットってかベルトしてたんだよね。

食う寝る風呂以外ではつけてなきゃいけなくて、食ったあとにだりーなんて思ってトイレのついでにつけに行ったわけ。


もちろんそんなの小するとこでつけんの恥ずかしいから個室に入った。

2つ個室があんだけど…俺は匂いに敏感だから手前はもしかしたら臭いが残ってるかもと奥の個室に入ったの。

…あっ、ごめんね。汚い話で。

んで入った瞬間…なんか嫌な感じでさ。


湿っぽくて暗くて…ちょいカビ臭いわけ。

だから、なんか気持ち悪くて手前に入り直したんだよ。


そしたらさ。


聞こえたんだよね。


…笑い声。

いや、笑い声だか叫び声だか、子どもなんだか女なんだか分からないけど遠いような近いようなところでさ。


もし、よくあるような隣の個室の上から覗いてるだったらおっかなすぎてぶっ倒れるから確認したんだけど…何もいなかったから良かったんだけどさ。


慌ててベルトしてトイレから出たんだよな。


でも、よく考えるとおかしいんだよな。


初めは焼肉屋だし、スタッフルームが近いとか他の客の笑い声かなとも思ったけど…


男子トイレは奥だったし…聞こえた場所は壁側だったから…なんもないはずなのにさ。


まっ、姿を現さなかっただけましだけど。


じゃあ、これでおーしまい。


ーーフッ シュポ
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