百物語

┣21本目 池面

え…え?!


もしかして…お姉さんって……。


ちょっ。その含みが入った笑顔でこっち見んのやめて!なんでもありません!そして俺は厨二病って言ってないからね!


…じーっと見られてるけど本当に言ってないから!


さ!さぁ!次にいきましょうか?!


俺の話!


俺の話は…怖いと言っていいか分からないけど体験談ね。


俺の家の近くに池があるんだ。その池は昼間はお年寄りが釣りを楽しんで冬は白鳥を楽しむ様な一見普通の池なんだけどね。


いつの頃からか変な噂がたつようになった。


「あそこには河童が住んでいて1人でいる人間を引き摺り込む」


ってね。


…あっ!笑ったっしょ!?分かるよ!俺も笑ってたもん!


…でも、これが笑い話で済まなかったんだ。その日俺はバイトが終わって急いでたんだ。時刻はそうだな…確か23時過ぎかな。いつもならその道は人気がないから通らないんだけど近道だった。


だから何も考えないでその道を通ったんだ。夜の池は昼間とは打って変わって不気味だった。静かに聞こえる水音が…昼間聞けば心地良いんだろうけど不気味さを醸し出してた。


急いで通ろうと足を早めた時だった。


ーーゴポゴポゴボ…


「!?」


明らかに何かが浮かび上がった音がして足が勝手に止まってしまった。


ー見るな!早く通り過ぎろ!ー


そう頭の中で警鐘が鳴っているがそれとは真逆に足は止まったままだし、首は池の方を向き始めた。


見たくないのに金縛りにあったかのように体は言うことを聞かない。


釣りをする桟橋のほうを見ると…その先に何かが居た。


まさか…本当に河童!?


流石にこの暗闇の中では笑っていた河童ですら恐怖だ。


ゆっくりと泳いで近づいてくるそれに恐怖で目を瞑った時だった。


「お兄さん危ないですよ。夜遅くにこんなところ通ると」


「ファ!?」


あまりに呑気な声に間抜けな声を出しながら見るとそこにはめっちゃでかい雷魚が居た。


ただ普通の雷魚ではない。顔があった。…イケメンの顔が。


「驚かせてしまったようですまない。早く通り過ぎた方がいいですよ。ここには良くないものが沢山居ますから。どうしても水場は人間さんの思いが溜まりやすいですからね」


開いた口が塞がらない俺に構わず雷魚は爽やかに話を続ける。


「僕以外は人間さんの霊なので引っ張られないように夜は別の道を通るのをお勧めします」


「それでは」


そう言って水面下に再び戻っていった雷魚のイケメン。…いやイケメンの雷魚?


緊張の糸が切れて座り込んだ俺はハッと我に返って静寂を取り戻した池に向かって思わず叫んだ。


「河童じゃねぇじゃん!!!」



ーー…これが俺の体験談。いや笑い話だけど笑えないからね!?


しかもイケメンよ!?爽やか系イケメン!プラスしてイケボよ!?


誰も信じてくれなかったけど!


とにかく不思議な体験には変わらないから!


意義は認めません!


ーーフッシュポ(勝手に終わらせた)
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