太陽と雪
「お嬢様?
どうされましたか?」


「矢吹は黙ってて!
お願い、独りにして」


何で?
何で会いたくないとか言うのよ!


私…今でも貴方のこと……
こんなに好きなのに。


「バカ藤原……」




気付いたときには、別荘のベッドに横になっていた。


なぜか、点滴までされていた。



何で点滴?


「お目覚めですか?
彩お嬢様」



そう言いながら、入ってきたのは、宝月家専属医師、高沢だった。


「高沢……」



「申し訳ございません。
無粋な真似を……

貧血気味でしたようなので、点滴をさせていただきました。

矢吹さんから、今朝辺りから彩お嬢様にめまいや立ちくらみの症状がみられると伺ったもので。

生理に伴う症状と推測されますので、ごゆっくりお休みいただくべく、そのように致しました」



別にいいわよ。
だって、それが貴方の仕事でしょ?


「ところで、高沢が何でフランスに?」


「知り合いに会ってきたので、そのついででございますよ」


このときには、気にしなかった。



この何気ない会話が、大きな意味を持っていたんだ。
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