太陽と雪
部屋に入ると、美崎が申し訳なさそうに、封筒を差し出してきた。

何……?
コレ……


「藤原さんの病室のプレートに挟まってたの。

「そう……」


中の手紙は、藤原の直筆だった。



「彩お嬢様


突然、あなたの執事を辞めてしまって申し訳ありません。


お嬢様は、全く気付いておられなかったようですが、私は小さい頃から、気管支喘息を患っておりました。

しかし、その症状は治まるどころか年々悪化し、執事を辞めなければならなくなりました。


辞めるにしても、彩お嬢様に心配をかけたくなかったのです。

だから、旦那さまに辞表を提出する際、旦那さまに念を押しました。

私の病気のことは、お嬢様だけには伝えないでくれ、と。


そう言いながらも私は、彩お嬢様のことが心配でございました。

そこに、彩お嬢様のご学友、美崎さまに遭遇したのです。


と言っても、行き場を無くしたとき、彼女の義母に反強制的に連行されたのでございますが。


美崎さまは、

「私の義母は、彩を陥れる計画を考えている。

彩の元執事なら、彩を監視して様子を伝えて。

彩に……危険が及ばないように。

貴方の身体のことも考えて、それが貴方に出来る最高の仕事だと思うわ」


と言われました。


美崎様の家から、彩お嬢様のお屋敷をハッキングいたしました。

その技術は、城竜二家の人間から教えられたのでございますが。


彩お嬢様のことは、遠くから眺めるだけで、満足でした。

しかし、あのテーマパークのホテルでは、どうしても見ていられなくなりました。

転びかけたお嬢様を助けるという、出過ぎたマネをしてしまい、申し訳ございませんでした。

やがて、監視の仕事もできないくらいの発作に悩まされるようになり、美崎さまの勧めで入院することになりました。

このままでは肺にまで重大な影響を及ぼすということで、絶対安静を心がけろと言われ、美崎さま以外とは面会謝絶でした。

それでも、医師の権限を使って、高沢はたまに面会してくれました。

その際、彩お嬢様のことも報告してくださって、嬉しかったです。


相手は城竜二です。

私と美崎さまは、義母の計画について、たまに
筆談で話しています。

この様子すら、ハッキングやらをされているとしても、おかしくはありません。

この行動ですら、命を奪われることも、あるのですから。


彩お嬢様。私の身に何があっても、悲しまないで下さい。

いつも、彩お嬢様の心の中におります。

私は、彩お嬢さまの笑顔が一番好きですから。


藤原 拓未」


何よ……コレ……




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