太陽と雪

想い

遺書……じゃないけど、それに似た感じの文面。

読んでいて、胸が締め付けられた。


ごめんね……藤原……


私、しばらく貴方のこと、避けてた。

どういう顔をして会えばいいか、分からなかったの。


「いいではないですか。

言いたいことはすべて、明日の告別式及び通夜で告げればよいのですよ」


「矢吹……」


「もう……ムチャするんだから。

朝からいないし。

貴方にまでもしものことがあったらどうするつもりだったのよ。

嫌よ。

執事を2度も失うの」


「申し訳ございません。
平にお許しを」



なぜか、美崎がそっと部屋から出ていくのを横目で追う。


「もう……いないのよね……藤原……」


「そう……でございますね……」


改めて、現実を知った。


「ちなみに、あの……性格のねじ曲がった城竜二の専属医師ですが……

こう言っておりました。

結果的に、殺害できて良かった、と。

おそらく、やはり、城竜二の人間は、知っていたのでございましょう。

藤原が美崎さまと手を組んで、彼女の義母の計画を阻止しようとしてくることを」


「何それ。

藤原を殺す動機……ちゃんと存在していたんじゃない」

「そう……なりますね……」


突発的に、ある恐ろしい考えが頭に浮かんで寒気がした。


「きっと、裁判にかけて有罪にするの……ママよね……

FBIとして捜査するのもパパだろうし。

ママやパパに何か起こる可能性も……少なからずあるでしょ?」

無性に怖くなって、矢吹に抱きついた。

「お嬢様……?」


「怖いよっ……」


「大丈夫でございますよ。

危機管理能力が高い人間は、狙われにくい傾向にあります。

旦那様や奥様は、大丈夫ですよ。

むしろ、お嬢様のような危機管理能力に長けていない方が、私は心配です。

貴女のような方をお守りするために、私がいるのですから。

お嬢様もバカではありませんので、それくらいはご理解いただけますよね?」


「ありがと……」


久しぶりの毒舌でさえも、なんだか嬉しかった。
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