太陽と雪
突然鳴り響いた、俺の携帯。

つい、指を左にドラッグさせそうになった。


大分使い慣れたスマホの操作なのに、たまに間違えるのだ。

誰か分からない相手とはいえ、通話拒否はさすがにマズい。

「もしもし?」


『あ、麗眞くんか。

……久しぶり……だな。

そして、こんな夜遅くに済まないな』


俺が4年間通っていた大学の教授だった。


「構いませんよ。
どうされたんですか?
教授」


『実は、明日、学生生活安心・安全ガイダンスをやるんだ。

その講師が急用で来られなくなってね。

今、代理を探しているんだ』


毎年、刑事が安全に学生生活を送れるよう、40分程度、講演をすることになっている。

新入生には大事な問題だし、実施しないわけにはいかない。



「よろしければ、私やりましょうか?」



俺がそう言うと、君みたいな学生を持って幸運だなどと言ってから、電話を切った。



ったく……


係長に、すぐに電話を掛けた。


「もしもし?

俺です、宝月 麗眞です。

すみません、明日の仕事は、早く抜けさせてもらいます」



『母校での講演か?
いやあ、助かったよ。

あの仕事、誰もやりたがらないんだよ。

ピチピチの女子大生もたくさん見られて目の保養になると思うんだが。

なんでだろうねぇ?

その分、給料、上げておくから』


その言葉の後、電話は切れた。


こんなのも、刑事の仕事なのかよ……


ってか、講演やらせるなら姉さんにしろよ。

俺と違って講演、やりなれてるし。


でも……この講演に行って良かったって、思うようになるんだ。


思わぬ再会というか……巡り合わせによって。




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