太陽と雪
「……分かったよ。

話は後で聞いてやるから、とりあえず食堂行こうぜ?

俺、腹減ってるの」


しぶしぶそう言うと、椎菜は嬉しそうに腕を絡めてきた。

こーいうとこが、ホント可愛いんだよな……

そう思いながら、学生時代はよくこうして一緒に帰っていたことも思い出す。

とっとと気持ちを伝えて、あの頃みたいに、こうして隣を歩きたい。

そして、あわよくば可愛い鳴き声を聞きたい。

「それにしても、椎菜、何で今、俺のこと、さん付けだったわけ?」


「だって……
変に名前呼び捨てして、学生に囃し立てられたりしたら嫌でしょ?」


なるほど、椎菜、そういうところによく気が付くやつだったな、昔から。


「ふーん……
椎菜なりに気遣ってくれてたんだ?
でも、今は別にその気遣い要らなかったんじゃないかな。

今はまだ、彼女でもなくて昔の知り合いと再会したってだけなんだからさ。

ホラ、食堂行くぞ?

椎菜も何か食え。

その細い身体で、よく昔の深月ちゃんみたいに何足もわらじ履けるよな」


椎菜が露骨に傷付いた表情をしたことに、俺は気付けなかった。

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