太陽と雪
とりあえず、日陰に連れて行った。

近くにあった自販機で、スポーツドリンクを購入する。


「椎菜。
ホラ、スポドリ。
飲める?」


「ごめ……無理そ……」

か細い声で、無理という意思が伝えられる。

その目は潤んでいて、理性を総動員して衝動を抑える。

危うく、変な気を起こすところだった。

今、この場で彼女を押し倒したら、強姦罪で刑務所行きだ。

そんなことを考えている場合ではない。

スポーツドリンクを飲ませなければ。

人目がないことを確認してから、椎菜に口を開けるように言った。

微かにうなずいた椎菜をみやって、スポドリを自ら口に含む。

そして、自らの唇を椎菜の、紅く彩られた唇に重ね合わせる。

口移しで……無理矢理でも飲ませる。


先程、何とかブレーキを掛けた箍を外す行為だということは分かっていた。

唇の感触が懐かしくて、もっと欲しいと、俺の中の雄が昂るのが分かった。

しかし、こうするしかなかったのだ。

早く少しでも症状を抑えてやらないと、ひどくなって、最悪の事態になるかもしれない。

それだけは避けたかった。


「平気?

飲みこめたか……?

椎菜……」


もはや喋る気力すらないのか、微かにうなずくだけだ。

それでも、嬉しかった。


バカだな、俺。

こんな状況なのに。

椎菜と唇を重ねられたことを、嬉しいと思ってしまっている。


そんな気持ちを頭から打ち消して、椎菜の着ていた白いレースブラウスのボタンを胸元辺りまで外した。

キャミソールから覗く黒いレースとフリルに、昂っている雄が更に反応する。

高校時代から、更に大きさが増したと思われる、2つの膨らみに触れたくてたまらない。

……こんな場所で。

彼女がこんな状況でなかったら。

間違いなく触れている。

抑えろ、麗眞!

彼女が元通りに回復するまでの辛抱だ。

しているのは、これ以上症状を進行させないための処置だ。

何かないかな……

冷やすもの。

必死に考えるが、頭が回らない。

どうしても脳内に先程目撃した黒いレースとフリルがチラつく。

都合よく、保冷剤などという便利なものは持っているはずがなかった。


そしてあいにく、もうずぐ講演のために、体育館に向かわなくてはならない。

時間切れ、か!

こんな場所に、弱った彼女を、こんな状態で置いていくことは不可能だ。

自ら「襲ってください」と宣言しているようなものだ。

どうするべきか思案していると、見慣れたドクターヘリのプロペラ音が聞こえた。

……高沢か。


「……遅い!」


「申し訳ございません……
麗眞坊ちゃま」


「……冗談だよ。

椎菜のために準備してくれてたんだろ?

ナイスタイミング。

そろそろ講演の時間だ。

愛しの椎菜をこんな場所にむざむざ置いていけないから、どうしようか迷っていた。

ちゃんと治療しとけよ?

……あと、絶対ないとは思うけど。

俺の大事な椎菜に惚れんなよ。

手も出すなよ?

手を出したら、専属医師クビな?」


俺はそれだけを早口で高沢に告げて、急ぎ足で講演をする体育館に向かった。






< 170 / 267 >

この作品をシェア

pagetop