太陽と雪
「わぁ!
いつ来てもすごいわね……!」


ニッコリ微笑む矢吹の後ろで、呆れたようにため息をつく麗眞。

「女って、ホント好きだよな、こういうぬいぐるみの類」


「麗眞坊っちゃま、レディーの買い物には快く付き合ってあげるものでございますよ」


相沢さん、よく分かってるじゃない。


「相変わらずアホなのね。

女心分かんないなんて。

そんなんだと、椎菜ちゃんにヨリ戻してもらえなくなるわよ?

それでもいいワケ?」


「そうですよ麗眞坊っちゃま。

椎菜さまの前でも、そのようになさるおつもりで?」

「コラ、相沢!

それ言うな……!

そういえば、こういう可愛いぬいぐるみの類、椎菜も好きだったな。

そういや、片手で数えられるくらいしか椎菜の家に行ったことないんだけどな。

椎菜と夜過ごすときは大体屋敷に連れ込んでたし」

「ん?
何か言ったかしら?」


麗眞が何か言った気がしたけど、買い物に夢中な私は全く気づかなかった。


「彩お嬢様……

お嬢様は、鋭いときと鈍いときの……両極端なのでございますね」


「はあっ!?
意味分かんない。

矢吹。

それが買い物中のレディーに掛ける言葉かしら?」


「大変失礼致しました、彩お嬢様」


もうっ……
ホント、発言は時と場所を考えなさいな。


「ねぇねぇ矢吹?

華恵さんの娘は2人へのお土産のマスコットチャーム、大きいサイズと小さいサイズ、どっちがいいかしらね。

もう、マスコットチャームなんて年齢じゃないかしら」


「おや、このテーマパークのマスコットチャームは大人の女性にも大層人気と聞いております。

マスコットチャームでもよいのではないでしょうか。

声優イベントやアイドルイベントなどで推しの服を着せたマスコットをカバンにつけてアピールする方も大変多いようです。

それを考慮に入れるならば、小さいサイズのものがいい気が致します」

他の家の情報までバッチリ頭に入っているあたりは、さすが執事ね。

「そう。
貴方が言うなら……そうさせていただくわ。
ありがと」


そして、この店での買い物は終了した。


「お嬢様……こちらの品、ほとんどがお嬢様のものでございますよね?」


「い……いいでしょ?
矢吹」

どうせ、これらの荷物はホテルまで送ってくれるはずよ。

宝月家専属の宅配業者が。

宝月の屋敷は、そういうサービスまで至れり尽くせりなのだ。

「さ、いいから、次行きましょ」


エントランス寄りのエリアにもたくさん店があったし。


「お嬢様?
買うべき品をきちんと取捨選択致しますようにお願いいたします」


「言われなくても分かってるわよ。
ちゃんとするわ」


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