太陽と雪
矢吹ったら……
優しいのかそうじゃないのか、よく分からないわ。

ってか……

よくよく見ると、結構……いい顔立ちしてるのよね、矢吹って。

目は二重だし、鼻は高いし……唇も厚いし。

矢吹が通るたびに、メイドが黄色い声でキャーキャー騒ぐのも、分かる気がするわ。

まあ……そう見えるのも、いつもの執事服(それが後にスワロウテールというものだと知った)じゃないからかもしれない。

グレーのタンクトップに黒のテーラードジャケットにジーンズっていう、いかにも普通の格好だ。

ジャケットを脱ぐと、私が本業やら副業をしている合間に鍛えているらしい身体が露になるのが、ちょっとお気に入り。


って……

私ったら、何、執事のこと気にしてるのよ……
バカらしいわ。


「……?
お嬢様。
私の顔に何か付いておりますか?」


「何言ってるのよ。
そんなワケないでしょ?」

「さようでございますか。

それはようございました。

私、彩お嬢様がやけにボーッとしていらしたので、熱でもおありなのかと心配だったもので。

私の取り越し苦労でしたら安心いたしました」


ったく……
いらない気遣いね……


「そんなことないから大丈夫よ。
心配しないで。

彩ちゃんは今のところ元気だから。

……でも、ありがとう」


「どうされました?
彩お嬢様。

本日は、やけに素直でございますね……」


「姉さん、やっぱ熱あんじゃねーの?」


「麗眞!
何言ってんのよ!」


「ってか……相沢さんも、矢吹も、笑うな!」


気分を紛らわすために、とりあえず目に入ったお店に向かった。


すごい……
なんか……映画の中でセレブが買い物してそうな店ね。

「こちら、あの有名な『ロミオとジュリエット』に登場致します、モンタギュー家の書斎をイメージしているようでございます」

モンタギュー家……
確か、劇中でロミオが住んでいる家よね?
私も……うろ覚えだけれど。

「ロミオのがここってことは、ジュリエットのもあるのかしら」


「この店の左隣にあるようですよ。
後で参りましょうか」


「そうね。
でもまずは、アクセサリー見てからにしないと!」

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