太陽と雪

夏祭り

皆でお昼に中華料理を食べた後、チェックアウトの準備をした。

お土産等の荷物は既に、屋敷に運ぶように岳さんに頼んである。


ホテルの自室に戻ると、矢吹が得体の知れない着物を持って部屋の中にいた。


「何?
その……よく分かんない服は」


「彩お嬢様。

本当に奥ゆかしい方でございますね。

浴衣もご存知ないとは。

お嬢様が20歳の誕生日を迎えられた際、お召しになった振り袖の仲間でございます」


着物……嫌いなのよね。

あの…帯っていうの?

胃が圧迫される気がするのよね。


食後だし、胃が苦しくなる服はいろいろマズイんじゃないの?

一瞬そんな考えが頭をよぎった。

最後の滞在ということで、いろいろホテルの中を探検してから帰って来たから、食後3時間は経っている。


「ち……ちょっと待ちなさい、矢吹。

まさか……また貴方がこの……浴衣とかいうの着せるとかじゃないわよね?」


「これも執事の仕事でございますゆえ……」


えっ……


ブラの上にキャミソールは着ているけれど……
恥ずかしいわ!

ない胸を、執事といえど異性に見られたくない!

「こちらはさすがに1人ではお召しになれない代物でございます。

どうか、素直にこの私にお任せを。
彩お嬢様」


「貴方がそこまで言うなら、任せてあげてもいいわよ」


有り難きお言葉、大変嬉しゅうございます。
とか何とか言って、着付けを始める矢吹。


「いい?
矢吹。

下着とか見たら、ぶっ飛ばすわよ?

仕方ないから、チラ見程度なら許してあげるけど」


「ご安心を。
私は、そのような不埒なマネは致しませんよ」


「まあ、いいわ。
私としては、貴方の言う不埒なマネが何なのかが気になるけれど」


「お嬢様。

分からないのでしたら、結構でございます。

彩お嬢様には、まだまだ純粋なままでいてほしいですからね」


何言ってるのよ。


1日目の滞在のときはさりげなく耳元で話しかけてきたり、タオル越しに胸触ってきたくせに!
よく言うわ。

散々に私の心を乱しておいて。


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