十三日間
九日目 「俺」
「………ふ……はは…っ」
目覚めた時、俺は幸福感でいっぱいだった。
そして、ラベンダーの甘い香りに包まれていることに気付く。

…ああ、これは、ラベンダーの香りだ……。

俺は、ようやく思い出した。

すぐに消えてしまうのはわかっている。
少しでも長く香りに包まれていたい。
今朝は、痛切にそう思った。

それでもやはり、香りはすぐに消えてしまう。

それはそうだろう。
これは、現実にある香りじゃない。

俺の、頭の中で想像している香りなんだ。

いや、夢の中でかいでいる、香り。

起きた時にも、頭が錯覚して、現実にかいでいる気分になっているだけだ。

俺は、ようやくそう分析するに至った。
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