十三日間
ラベンダーの香り。
これは、俺がおそらく物心つく前に嗅いでいた匂いらしい。
教育の時、心理学についての教育と実験をした際に、知ったことだ。
俺自身が認識して嗅いだことはない。
だが、身体や、脳が記憶している。

産まれてすぐに、嗅いでいた匂い。

人は、そういったものはいつまでも覚えているのだそうだ。
俺にとって、おそらく母親にあたる人物がその香りを連想させる匂いをしていたのだろう。

どうして、どんな匂いだったのかは知る術もないが、俺が反応するのはその匂いだった。

…そして、あの女がまとっていた香りも、ラベンダーをベースに使った香水だと言っていた。

直接的にラベンダーの香りがしていたワケじゃない。

だから、気付かなかったし、連想できなかった。

だが、そう思い返してみると、俺が毎朝かいでいた香りに、確かに近い気がする。

ラベンダーの香り……
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